ハリウッド映画を字幕なしでは楽しめない人に。

ボク自身についていえば、ずっと長い間、ハリウッド映画を字幕なしでは理解できませんでした。現在のハリウッド映画は、全世界を市場と考えて制作されているので、セリフについては、英語圏の国では理解できる英語のはずですが。今ではだいたい理解できるようになりましたが、それでも米国国内向け放送(特に米国南部)の言葉は聞こえても意味が解らない場合が多いように思います。
先日も、仕事の関係で、米国南部の会話を理解しようと、Boseのノイズキャンセラー付きヘッドフォンをつけて数時間がんばりましたが、完全にはわかりませんでした。仕事の発注先がトランスクリプトを渡してくれたのですが、そのトランスクリプトにも載っていない言葉もありました、でもその程度は、吉本新喜劇が解らないのと同程度です。現地に住まない限り、100%理解するのは無理かもしれません。

前置きが長くなりました。題目は「どうすれば聞き取れるようになるか」でした。
過去に遡ります。ボクが大学教員をしていたころ、ある帰国子女の学生がいました。そこで、その人に、こんな風に尋ねてみました。
「英語の映画とかスピーチとか、聞き取れないんだけど、原因は何だろうか?」
答えは明確でした。

「原因は(1)まず、その単語を知らないこと。(2)仮に聞き取れない単語が知っている単語であるなら、文字と音声が一致していないこと。」

ぼくの場合、外国人との会話の場なら、相手の外国人は、ぼくの言ったことを「推測」してくれるし、こちらも聞き返せるので、結果的にたいした問題が起きていなかったのですが、スピーチや映画だと聞き返せません。そこで何とかして、相手の話していることをその場でキャッチしたいと思いました。
でも、その時、ボクの年齢は、すでに言語習得に最適な年齢をはるかに超えていました。

この不利な状況で、「文章の中での英単語(フレーズ)と音を一致させる」にはどうしたらいいかを考えました。到達した答えが"audiobook"を聞くことでした。
[方法]
(1)まず1章ごとに音声だけを聞いてどれくらい理解できたかを確認する。
(2)audiobookで音を流しながら、文を読む。
(分からない単語があっても、マークをつけつつ、全文を聞きながら読む。)
(3)不明な単語、不明な言い回しをインターネットで確認する。
(紙の辞書、特に英和辞書は役に立たないことが多いように思います。
それは実際の用例が少なすぎて、どんな状況で使われるのか見当がつかないから)
(4)文の意味を理解した上で、何度も聞き読みをする。
(5)また、耳だけで聞く。
(6)耳で聞きながら、自分でも声を出して唱和する。

これを繰り返しているうちに、ずいぶん聞き取れるようになりました。
この方法は、きっと学習者の年齢を問わず有効だと思います。

勉強するための材料として、ボクが一番お薦めしたいのが、村上春樹作品の英語版です。
理由は、
(1)翻訳物という性質上、文法的に普遍的な英語になっていると思う。
(ボクは英日の翻訳をすることがありますが、納品する日本語は、接続詞、助詞、句読点までチェックして間違いないことを確認しています。理由は、翻訳という仕事の性質上、発注先からクレームがでないように注意する必要があるからです。)
(2)翻訳された英文の中に不明な箇所があっても、日本語原文は100%正しいのだから、それを手がかりに、不明な英文を丸ごと覚えてしまえばいい。

上記の点から考えると、Amazon.comKindle版を買うと、比較的安価にAudibleのaudiobookを入手でき、しかも、読み進めるページと音声が同期してくれますので、お勧めしたいと思います。

[蛇足]
外国語を扱う仕事に応募すると、かならず、「あなたの英語力はどれにあたりますか」という項目があり、
(1)日常会話ならできる
(2)ビジネストークができる
(3)翻訳・通訳ができる
という風にランク分けされているのを目にしますが、
ボクの目から見ると、(3)が一番簡単です。なぜなら、相手の言ったことをそのまま伝えればいいからです。
(2)ビジネストークでは、売り込むためのパッションを英語で伝えるのは大変でしょう。

ボクの目から見ると一番難しいのが、(1)です。
以前、仕事の関係で弘前に行ったことがあります。
その会合で、スピーチは問題なく理解できましたが、会合のあとの歓談の場で、隣に座った看護師さんのおっしゃっていることが、ほとんど理解できませんでした。

英語については、もっと地域差があるのではないかと思います。英国、米国だけでなく、アジア各地でも、日常会話で使用されることがあり、それぞれ独特の癖があります。ボクは経験上、インドの方の話す英語がほとんど理解できませんでした。